2017年8月4日 ウイルスの進化

AIに導かれた病原性RNAウイルスの分子進化研究

和田佳子, 和田健之介(長浜バイオ大), 岩崎裕貴 (遺伝研), 池村淑道(長浜バイオ大)

 

エボラやインフルエンザウイルス等の病原性RNAウイルスは進化速度が速く,持続性のある治療法の開発を困難にしているが,その社会的重要性から大量な株のゲノム配列が集積している.このような大量情報から,想定外の新知識を得る方法としてAIが考えられる.

我々は十数年前より「教師なしの機械学習:BLSOM」でオリゴヌクレオチド頻度を解析することで,ゲノム配列に潜む多様な特徴を見い出して来た. 病原性RNAウイルスの場合には,自然宿主からヒトへと侵入した際に再現性を持って繰り返す,方向性のある時系列的な変化を見い出した(Iwasaki et al. DNA Res18:125-136, 2011. BMC Infectious Diseases 13:386, 2013. Wada et al. Scientific Reports 6:36197, 2016).

分子進化は, 突然変異と呼ぶランダム性の高い素過程を基礎にしている. 従って, 明瞭な方向性を見い出し難いと考えられるが, 大量な株を解析することで再現性のある変化を特定でき,裏に潜む分子機構を研究する手掛かりが得られた. 自然宿主(エボラの場合はコウモリ, インフルエンザの場合はトリ)で生育していたウイルスがヒト集団へ侵入した際に, ヒト細胞側が理想的な生育環境を提供しているとは考えられない. ウイルスゲノム側が変化することで, より効率的に増殖できると考えられる. 方向性や再現性を持つ変化が起きる原因となる.

20連塩基組成(約1兆1千億次元の変数)等の長いオリゴヌクレオチドについて,変化をもたらす分子機構を解析すると, 核酸医薬の開発に有用な知見がえ得られると考えている.

 

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