2017年8月5日 中立説

中立説(高畑尚之)

Motoo Kimura(木村資生、1924~1994)の研究人生は、分子生物学の発展と実に密接な関係がある。Kimuraは分子生物学が台頭した30代の後半にはすでに集団遺伝学の3創始者であるRA Fisher、JBS Haldaneと S Wrightの後継者と見なされていた。若きKimuraはそのような高度な集団遺伝学の理論を、分子レベルで観察される遺伝的変異と直接関係づけることを夢みた。40代になるとまさに夢を実現する新しいデータが蓄積しはじめた。しかしそれは意外な光景であった。それらの変化を支配している力がダーウニアンとして信じてきた自然選択ではなく、偶然が支配的な突然変異と遺伝的浮動であったからである。中立説は異端であった。当時の多くの進化学者にとって中立説はまったく馬鹿げたものだったし、なかには悪魔的であると批判するものもいた程である。Kimuraはこのような状況に立ち向かい中立説を確固たるものにした。同時に中立説はKimuraの生き甲斐そのものにもなった。来年中立説が50周年を迎えるにあたり、本講義ではKimuraの個性に触れながら中立説の現状を論考する。

 

スライド(PDF, 2.4M)はこちら